「勝利への航路ー2020黎明篇」
波乱のインカレからはや2ヶ月。
各大学は次なる熱き戦いに備え、
その牙を研ぎ始めている。
「2020年シーズンを如何なるものにするか」
その取り組みに迫るーー
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勝利への航路2020、第1弾は、日本ボート界で圧倒的な存在感を放つ日本大学ボート部。全日本選手権大会や全日本大学選手権大会において幾度となく優勝しており、2018年の全日本大学選手権では前人未到の男子総合優勝13連覇を達成。
今回は2020年度の副将の春名祐希と、対校COX兼主務の三輪拓斗、マネージャーの小笠原美彩が取材に応じてくれた。
日本ボート界をリードする存在である彼らは何を語るのか。
日大艇庫前にて。艇庫には黄色い艇が揃う。
略歴
■春名祐希 3年 副将
第39回全日本軽量級選手権大会 男子エイト5位
第44回全日本大学選手権大会 男子舵手なしクォドルプル優勝
第95回全日本選手権大会 男子ダブルスカル8位
第40回全日本軽量級選手権大会 男子舵手なしペア3位
第45回全日本大学選手権大会 男子舵手なしフォア7位
第96回全日本選手権大会 男子舵手なしクォドルプル優勝
第46回全日本大学選手権大会 男子舵手なしペア6位
第97回全日本選手権大会 軽量級男子舵手なしペア2位■三輪拓斗 3年 COX兼主務
第45回全日本大学選手権大会 男子舵手付きペア優勝
第96回全日本選手権大会 男子舵手付きペア優勝
第46回全日本大学選手権大会 男子エイト4位
第97回全日本選手権大会 男子エイト5位■小笠原美彩 3年 マネージャー
目次
日本大学の一日の流れ
コギカジ(以下、コ):よろしくお願いします!まずは一日の流れを聞かせてください。
三輪(以下、三):起床は4:30で5:00頃に乗艇し始めます。乗艇時間は2時間くらいで8時には艇庫を出る感じですね。日大はキャンパスが学部ごとに分かれていますが、戸田からだと、どのキャンパスも移動時間に差はないです。授業が終わると艇庫に帰ってきて、C2かランニングを行います。平日の午後に乗艇はなく、エルゴもメニューとして行うことは稀ですね。日大にとってエルゴは乗艇前のアップか2000TTの時にやるものという感じです。
春名(以下、春):日午後~月曜終日はオフなので門限が無くなり、各々遊んだり自由な時間を過ごしています。
コ:自己責任の文化が根付いているように感じます。
春:そうですね。次の日の練習に支障が出て質の低い練習を行い、その部員が結果として良いシートに乗れなくてもその部員の責任、という発想です。僕が入部したときは今以上に部内の雰囲気は良い意味で緊張感があって、規律があったように思うことがあります。以前は一年生に指導する分、上級生自身ができていなければいけないという空気が強くあったのですが、最近は上級生の目が甘くなっているかなと。そのことがなんとなく緩い雰囲気に感じてしまうことはあります。
コ:世代でチームの雰囲気は変わるとは思いますが、副将の春名君の目からはそのように見えているのですね。ちなみに主将や副将といった役職はどのように決めるのですか?
副将 春名(左)と2019年対校COX 三輪(右)
新体制について
三:投票制ですね。毎年インカレが終わってから1・2・3・4年生と監督・コーチが一人1票ずつ投票して、最高投票数を獲得した人が主将で、2番目が副将ということです。主務は監督・コーチの指名で決まります。なので今日(9月某日)は幹部が決まってまだ1週間だし、僕は春名がまさか副将になると思ってなかったし。笑
春:ニヤ笑
三:いやでも、僕は誰が主将・副将しても結局同じだと思ってるんで。誰が部を引っ張ることになっても、目指すとこは同じなんで。
コ:目標はインカレ総合優勝ですか?
目標・スローガンは明文化しない
春:目標を明文化してないです。わざわざ宣言しなくても、僕たちが目指しているのは、勝つこと。それはインカレ8+で勝つことだし、他種目で勝つことでもある。そしてその結果が総合優勝という結果になるだけ。
三:他大学っていわゆるスローガンをシーズンごとに決めたりするじゃないですか。僕たちはそういったことも特にしません。勝つために日大でボートをやっているので、何をわざわざ改めて決めるのかという感じですかね。ですから、勝つための努力ができない人は部にいらないです。そういう意味では今一年生の熱量が上級生に良い刺激になっていると思います。フレッシュな彼らが上級生を脅かす存在になってくれることは、大歓迎です。COXとしては、来年の対校8+に一年生クルーが入り込む可能性を感じています。
コ:勝つことへの迷いの無さは流石です。話は変わりますが、マネージャーはどのような仕事があるのでしょうか。
小笠原(以下、小):マネージャーの仕事は大きくは3つですね。大会の時のサポートと夕飯作りと定期戦の実行委員会として大会運営をすることです。シフト制なので週に1回艇庫に来ます。ご飯のメニューは栄養士の方が組んでくれます。COXもご飯作りをするので、私は1年生の時から三輪君とは部内の中で結構話す方でしたね。笑
人によっては全くコミュニケーションのない漕手とかいますが。笑
コ:週に1度だと確かに話すタイミングはあまり無いかもですね。漕手目線からマネージャーに「もっとこうしてほしい」という要望とかありますか。
春:特に無いですね。自分たちのことは自分たちでやるのが大切だと思ってます。当たり前のことを当たり前にやりたいですし、ご飯を作ってもらっているだけでありがたいです!
小:そう言ってくれると嬉しいです!日大ボート部でマネージャーをやっていることに誇りを持っていますし、一生懸命な選手をサポートできることに、私こそ日々感謝しています。
コ:選手一人一人が自立しているのがわかりました。ところで、日大のヘッドコーチは日本代表のコーチでもありますが、どのようなメニューを行っているのですか?
自分でやるべきことは自分でやる、自己責任の精神が根づいている。
今年の敗因はフィジカルの完成度
三:コーチから月ごとのメニューが来て、それに沿って行います。基本的にコーチは週末しか来ません。今の時期なんかは乗艇でB1 15㎞、午後の陸トレでC2かランニングといった感じです。一人一台GPSと心拍計が渡されていて、心拍数を管理しながら各々のターゲットタイムを出せるようにしていく感じです。やっていることは日本代表と同じですね。ある心拍数でこれだけのB1のタイムが出ているから、2000mに換算したらこれだけのタイムが出るだろうという感じで今の完成度を把握していきます。メニュー自体は最低限の内容なので各自+αで乗艇距離を伸ばしたりエルゴをやったりします。練習も基本的に自主的に行うものなので、やるもやらないも自己責任です。
コ:日大の漕ぎってどんなものだと考えていますか?
三:「強く長く」です。基本中の基本ですが、艇速を出すには強く長く漕ぐことが大切です。実際僕はレース中のコールで「前から強く」とか言いますし。水上でもキャッチやフィニッシュのポイントをクルー内で確認したりと特別なことはしていません。
コ:意外なようで本質的なお話でした。ボート関係者がみんな気になると思うのですが、今年のインカレの敗因はどのようにお考えですか?
春:フィジカルの完成度だと僕は考えています。ここだけの話、過去の先輩たちは最低限のメニューをこなして、夏前に一気に仕上げてもインカレで勝ってきたんです。それはエルゴも回して乗艇スキルもあったからできたことでした。ただ、今年のインカレで負けた原因にもつながると思いますが、冬の追い込みが足りない漕手が目立つようになりました。僕たちは他大、特に国公立大学が驚くだろうってくらい漕がない。僕の感覚でいうと、一橋の半分とかしか漕ぎ込まないかもしれない。今の部員はそこまでエルゴを回す人間が多くないので、危機感を持っています。今年のインカレの結果を真摯に受け止め、やっていかなくてはいけないです。課題はフィジカルだと思っているので、冬場に基礎体力の底上げをしていくつもりです。
勝つためにはフィジカル強化が必要だと語る。
来年に向けて
コ:最後に来年に向けて一言ずつお言葉をどうぞ!
小:一生懸命な選手を支えるしかないと思っているので、最後まで全力でサポートしていきたいと思います。
三:僕はCOXなので、乗る艇で全てのレースで勝つことですし、もちろんインカレ8+で優勝することです。
春:今までは自分が乗っている艇が勝つことを考えてきましたが、今シーズンについては副将としてチームの総合優勝という大目標にもこだわっていきたいと思います。
ライター後記
“勝つことへの迷いの無さ“を日大ボート部から感じた。漕手一人一人が自立していて、その自主性は誰が主将になろうとも問題ないという環境に行き着くのだろう。今年のインカレの結果を受け止め、王者からチャレンジャーになった日大。フィジカルという敗因分析からオフシーズンへの課題を語ってくれた。日大のインカレ13連覇が途切れた2019年インカレであったが、2020年の王者奪還に向け彼らは動き出している。表彰台が櫻色カラーに染まる2020インカレとなるのか。他大学の躍進が著しい中で日大の挑戦が始まった。(K)
次回もお楽しみに!
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