勝利への航路ー2020黎明篇 #2 早稲田大学

来シーズンの開幕まで2ヶ月を切った。
各大学は次なる熱き戦いに備え、
その牙を研ぎ始めている。
「2020年シーズンを如何なるものにするか」
その取り組みに迫るーー

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第2弾は、今年のインカレで女子総合優勝、男子総合準優勝を飾った早稲田大学。その歴史は1902年まで遡り、現在においてもオリンピアンを数多く輩出するなど、日本ボート界を牽引する存在である。
今回は主将の田中海靖、女子主将の藤田彩也香、主務の荒井雄太、チーフコックスの奈良岡寛子にお話を伺った。

略歴
田中海靖
出身:今治西高校
2017年 全日本選手権 M4- 全体5位
2017年 全日本新人 M8+ 全体4位
2018年 インカレ M8+ 全体6位
2018年 全日本新人 M1× 準優勝
2019年 インカレ M8+ 全体7位

藤田彩也香
出身:小松川高校
2017年 全日本選手権 W2× 準優勝
2017年 全日本新人 W4×+ 準優勝
2018年 インカレ W4×+ 優勝
2018年 全日本選手権 W4× 全体6位
2018年 全日本新人 W4×+ 優勝
2019年 全日本選手権 W4× 全体6位
2019年 インカレ W4×+ 優勝

奈良岡寛子
出身:青森高校
2018年 インカレ W4+ 全体4位
2018年 全日本新人 W4×+ 優勝
2019年 インカレ W4×+ 優勝

荒井雄太
出身:早稲田大学高等学院

コギカジ(以下、コ):お時間いただきましてありがとうございます。早速なのですが、早稲田さんがインカレ後に行っているクロアチア遠征が気になるのですが、遠征について伺ってもよろしいですか?

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早稲田艇庫の食堂にて

藤田(以下、藤):はい!よろしくお願いいたします!クロアチア遠征は早稲田大学漕艇部のOBがクロアチアの大学とつながりがありまして、クロアチア代表のシンコビッチ兄弟のコーチまたはそのコーチの門下生の人にコーチングしてもらえる機会をいただいているんです。逆に早慶戦の時期に日本に招くなど、双方向的な交流を行っていますね。

荒井(以下、荒):遠征ではたくさんの学びがあります。一見フィジカルが日本人よりも強いから速いんだろうと思っていましたが、間違っていました。クロアチアの選手はいかに最小限の力で効率よく艇を運ぶかという考えに基づいた漕ぎを徹底していて、非常に繊細に艇の動きを感じて漕いでいるのが印象的でした。

田中(以下、田):僕はエイトに一緒に乗せてもらったんですが、艇の動きを感じるスキルが高く、日本に帰ってからも、遠征で学んだことを振り返りながら練習をしています。こうした世界レベルのローイングを生で感じる機会があることは、うちの部の強みだと思います。

コ:クロアチアのシンコビッチ選手のコーチから学べるなんて、さすが早稲田大学ですね、、!
続いて、通常の練習について伺ってもいいですか?

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早稲田のエンブレムが入ったえんじ色のウェア

荒:はい!一日の流れとしては、男子は4時半起床で5時乗艇、7時過ぎには艇庫を出ます。午後は数人で時間を合わせてトレーニングルームでバイクやウエイトを行っています。トレーニングルームにはエルゴ16台にワットバイク12台があります。卒業生がワットバイクの販売代理店業をやっていることもあり、設備は充実していると思います!

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空調設備も整ったトレーニングルーム

奈良岡(以下、奈):女子はアパートを艇庫外に借りていて移動時間も含むので、4時起床で5時乗艇が普通になっています。陸トレに関しては、スポーツ科学部の教員に指導していただいています。一人ずつ課題が異なるため、個別にカスタマイズされたメニューを与えられます。食事に関しても、早稲田大学で栄養学を専門にしている方に食事メニューを組んでいただき、マネージャーが作っています。学内の人脈を最大限使えることは、早稲田の強みだと日々感じています。

コ:スポ科の教員にウエイトの指導してもらえるなんて、最高ですね!
さて、次は監督さんについてお話を聞かせてください。

田:内田監督はボートについての新しい知識を取り入れてくださるので、指導内容も常に最新の知識に基づいているんです。しかも平日も含めて毎朝練習を見に来てくださるんです。内田監督には部員一同感謝しています!

藤:監督は面白い一面もあるんですよ!クロアチアに行った際も、室内ローイングマシンを私たちが漕いでいる時に、プール部分の採寸をしていたんです。それで、「これは戸田艇庫に穴掘ればできるのでは?」と言っている時は、さすがに笑いました笑。 どこに掘るんですかって笑

コ:内田監督が部員から愛されていることが伝わってきました!
そういえば早稲田って一般入学生も勧誘するんですよね?

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早稲田の魅力を語る

奈:そうですね。来る者拒まずで、一般入試の新入学生にも勧誘します。ただ、「日本一を目指していること」やそのために「生半可な覚悟では続かないこと」は伝えます。その中で頑張ってみたいと入部を決める人は勧誘期間は特に設けていないので、年間のどのタイミングでも歓迎します。ただ、例年は4月の早慶戦をきっかけに入部してくれる人が多いですね。隅田川までレガッタを見に来てくれて、ボートの魅力に気付いてくれるんだと思っています。

荒:部員構成比で見てみると、ざっくりと7:3=推薦:一般という感じです。でもやめる人はほとんどいないです。ボート未経験者に対しては、初めは先輩・経験者とは別メニューで練習を行いますし、新人コーチをつけて育成しています。新人には全日本新人後に全体に合流できるようなスケジュール感でボート選手としてのキャリアをスタートしてもらっています。

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創部の年(1902年)に購入した新艇に名づけられた「韋駄天」の名は現在も受け継がれている。

コ:僕も早慶戦を勧誘で見せられたらイチコロで入部しちゃいます。。笑
今年のインカレ、そして来年に向けてどのようにお考えですか?

藤:女子部としては昨年に続いて総合優勝ができてとても嬉しい結果になりました。インカレクルーの選考は、勿論エルゴタイムやシングルのタイムで決めるのですが、一方でクルー編成としては、人と人の関係性や漕ぎの相性などの視点で組み合わせを考えます。総合優勝を目指しているので、対校クルーに戦力を集中させるのではなく、各艇にリーダーシップをとれる人を配置するなど、あくまで全艇が勝てるような考え方です。その中でしっかり総合優勝をできたのは、選手層が本当に厚くなってきたんだと思っています

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オフシーズン中は部内順位によって規格艇で乗艇する者も出るため、少しでも速い艇で練習する為に部内競争は激化する。

奈:今年のW4+は下級生クルーで構成されているにも関わらず、全体5位という結果を出せました。彼女たちはまだまだこれからもっとレベルアップするので、来年も期待しているんです!私個人としては来年は最後のインカレになるので、引退後に後輩に何かを残せるように引継ぎにも力を入れていきたいです。

田:男子に関しては、インカレでM2-が優勝、M4+、M1Xが3位、M8+が7位に入賞するなど全体では総合2位という結果でした。今年の準優勝という結果に甘んじる事無く、来年は総合優勝できるように既に動き出しています。4月の早慶戦に向けて漕手層の底上げをしていきます。また早慶戦以降、インカレに向けて勢いが落ちるという課題を認識しているので、今年はその期間で勢いが落ちないようにチームを盛り上げていきたいです。

荒:僕が主務として今シーズン意識していきたいのは、チームとして部員みんなで共通認識を持っていたいということです。団結力・チーム力を上げて、今年以上の結果を残したい、その為に今年から新しい取り組みとして、スローガンを決めることにしたんです。今までは特にスローガンを決めることはなかったのですが、幹部としての総意もあって実施するつもりです。“ONE WASEDA”で勝てるチームにしていきます!

コ:お話ありがとうございました!早稲田大学漕艇部の強さの秘訣、学ばさせていただきました!お時間いただきましてありがとうございました!

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左から主将 田中海靖、主務 荒井雄太、
女子主将 藤田彩也香、チーフコックス 奈良岡寛子

ライター後記

今年の幹部はチーム力の底上げによってレベルアップを図ろうとしている。そこで、スローガンを掲げてみたり、下級生の意見を可視化するアンケートを実施したりと、新たな取り組みを始めているようだ。
女子のインカレ総合優勝連覇や、男子の総合準優勝など、チームとして強豪校であることには間違いない。しかし、現状に飽きることなく高みを目指していく姿勢には目を見張るものがあった。
2015年にはインカレ男子エイトで優勝を果たした早稲田が、来年のインカレで何色のメダルを手に入れるのか。
まずは4月、隅田川にて彼らの今シーズンを占うレガッタを早く見たい。(K)

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