社会人オアズパーソンとしての矜持〜今治造船ボート部〜

朝6時に会社に集合 。1時間の筋力トレーニング。
会社の食堂で朝食を済ませ、8時に出社。仕事に精を出す。
今はシーズン中なので15時に退社。各々が車に乗り込み、玉川ダムを目指す。
16時半、水上練習開始。*UTの低レートでじっくり2時間漕ぎこみ、1日を終える。
今治造船ボート部の選手たちの1日だ。
仕事に加えてボートを漕ぐ。ボートに加えて仕事をする。
しっかりと仕事もこなした上での競技活動である。


「社会人として漕ぐ。」その決断をした選手たちは何を考えているのか。
そしてそれを受け止め、会社全体でボート部を応援している今治造船という会社はどのような組織なのだろうか。

今回、今治造船ボート部の選手の皆さんにお話を伺うことができた。

*UTの低レート:ゆっくりとしたリズムで漕ぐこと

求められる自主性

今治造船ボート部には、アドバイザーコーチとして武田大作氏が2016年から就任。週末限定ではあるが、水上ではオリンピアンの直接指導を受けることができる。また武田氏の豊富な人脈を生かしたサポートは強みとなっている。

そうは言っても武田大作氏は専属のコーチではない。そうなると、全てを自分たちで考え実行しなければならない。いかにも大変そうだ。しかしそこにこそ「今治造船ボート部ならでは」があるという。

「練習メニューも自分たちで考えますし、メディアに露出しようとか、スポンサーを獲得しようとかの動きも部員でやっています。合宿所に泊まって自炊もしています。大変なこともありますが、専属コーチがいない分、選手目線でやりたいことが反映しやすい環境で、新しいことに取り組もうと思えば取り組めます。最近だと、コンパクトブレードのオールも、色々と自己負担になる部分もあるのですが、使ってみようとなりました。

このように、会社組織の中のルールありきの中で自主性が尊重されるため、選手一人一人の社会人としての自己成長にも繋がるのが良い点だという。

こうした環境に昨年新しく飛び込んできた二宮選手(元京都大学ボート部)は充実ぶりをこう語る。

「今治造船ボート部に来て、練習の計画や遠征の手配に主体的に関わるようになりました。このようなスタイルでは現場にいる選手の声が反映されやすく、意思決定も早いと感じます。また、ボートを速く進めるため、会社に貢献するため、チームに貢献するためにこんな問題があるからこうしようとすごくスムーズに試行錯誤できていると思います。

選手同士、技術的な面を非常によく観察していて水上でアドバイスし合ったりもしますし、毎日来てくれるコーチがいないからと困った思いをしたことはないです。」

専属のコーチがいない分、自分たちで考え、ボートに真正面から向きあう。それを全員ができているからこそ、互いに声を掛け合い助け合いながら成長できる環境があるのだろう。

▲玉川ダムボートコースにて。2019年愛媛国体のコースにもなった。
愛媛県は温暖で降雨降雪が少なく年間を通して安定して練習が可能。
▲今治造船ボート部のクラブハウスは2016年に竣工。
2階には社員やボート教室に来た一般の方がくつろげるラウンジも。

会社の一員として漕ぐ、ということ

「自分たちはなんのために漕いでいるのか。」
今治造船ボート部の選手たちが常に考えていることだ。ある種哲学的なその問いに彼らはどういう答えを持ち合わせているのだろうか。

「我々も働かれている皆さんと同じでサラリーマンですから、ボートの英雄として我々に資本を投下して欲しいなどと思ってはいません。
今ある環境で結果を出そうと頑張って、色々と試行錯誤をして活動をすること。これが会社にとっていい影響をもたらすと考えています。
仕事でも一緒で、成功するかわからないことにお金をくださいとお願いをすることは簡単ですけど、お願いして与えられた環境でそのコストに見合った結果を出すのは難しいことですから。
それをボート部が先頭切ってやれればいいかなと考えています。

あくまで選手も”会社の一員”なのだ。会社のために何ができるのかを考え抜いた先に出た言葉は、会社員として持つべき規範そのものだった。

私たちは、社会人としてボートができる環境をもらえていることに本当に感謝しています。そしてその気持ちを持って競技を続けることができていることが強みになっていると思います。仕事で悩んだ時も、基本的に会社にとってどちらがいいのか?いい影響を与えられるのはどっちか?を基準に考えるとシンプルで悩むことが少ないですね。」

▲工場内の安全指導員として現場をパトロールする岡部選手
▲取引先と新造船の品質確認を行う越智選手

今治造船という会社

そんな彼らを受け入れる、今治造船とはどの様な会社なのか。

●会社概要

・代表取締役社長
檜垣幸人

・沿革
創業以来120年、今治造船グループは常に企業革新に取り組み、昭和30年に鋼船の建造に着手して以降、2,700隻を超える新造船を竣工させています。
幾多の時代を彩った様々な新造船、そして企業革新の歴史が現在の今治造船を形成しています。

・業績
2020年度の売上高は3, 712億円。
創業以来半世紀を越える歴史を持つ造船専業メーカーであり、
新造船建造シェアでは国内トップ。世界では5位に入る規模を誇ります。
日本の貿易量に占める海上輸送の割合は99. 6%にも上り、海運は日本にとって人々の生活にとって必要不可欠なインフラです。
当社はその輸送手段として活用される船舶を長年培ってきた技術力で次々と設計開発し、物流の新しいシステムに貢献しています。


●チームの紹介

・メンバー
主将:岡部政憲(今治安全管理チーム所属)
越智寛太(今治品質管理チーム所属)
御手洗航(今治生産管理チーム所属)
二宮由紀子(今治営業チーム所属)

・サポートスタッフ
顧問:藤川浩史(今治営業チーム所属)
監督:井出健二(今治工作グループ機電装チーム所属)
マネージャー:井ノ口晴翔(経営企画本部秘書室所属)
アドバイザーコーチ:武田大作

・最近の戦績
2015年 全日本選手権 2位 男子ダブルスカル ※全日本選手権での最高成績
2015年 全日本軽量級選手権 優勝 男子ダブルスカル
2015年 シニア日本代表選出 アジアボート選手権(北京)出場 男子ダブルスカル
2017年 愛顔つなぐえひめ国体  優勝 成年女子ダブルスカル (愛媛選抜今治造船混成)
2017年 シニア日本代表選出 W杯第3戦(スイス・ルツェルン)出場(越智寛太)
2018年 朝日レガッタ 優勝(2連覇) 男子ダブルスカル
2018年 朝日レガッタ 準優勝 女子ダブルスカル
2018年 全日本軽量級選手権 準優勝 男子ダブルスカル
2018年 全日本社会人選手権 準優勝 男子ダブルスカル
2018年 全日本社会人選手権 準優勝 女子ダブルスカル
2018年 全日本選手権 4位 男子ダブルスカル
2019年 朝日レガッタ 優勝 (3連覇) 男子ダブルスカル
2019年 朝日レガッタ 優勝 女子シングルスカル
2019年 全日本選手権 3位 男子ダブルスカル
2020年 全日本選手権 5位 男子ダブルスカル
2021年 全日本社会人選手権 準優勝 男子ダブルスカル

・普及活動
地域に根ざした活動を目指し、日々取り組んでいます。地域でのボート教室、大学への講演、各種スポーツボランティアへの参加など部員一丸となって取り組んでいます。

▲新造船の進水式の様子。地域の学生や海外からゲストを招き開催する。日本のものづくりの素晴らしさを伝えていく今治造船の社会貢献活動のひとつ。
▲来島海峡大橋を通過する今治造船が建造した世界最大級のコンテナ船。(全長400m、幅58.5m。20000個積み)

そして選手たちにも、今治造船の魅力を伺った。

「簡単にいうと、非日常感を味わえます。今治工場では200m、広島工場では350m、西条、丸亀工場では最大級の400mの船を建造するぐらいです。動力で動く建造物として最大級で、そのスケール感に圧倒されて入社する人も多いです。
あとは、社長とボート部が距離が近いので、我々ボート部の慰労会を開いて下さったりします。
遠征結果を社内全体にメールすると、必ず激励のメッセージを届けて下さるのも社長です。少数精鋭でありながら、アットホーム感があります。大会後会社に帰ってきて、結果が悪かったら冗談交じりで「何してるんや」と言ってくれる社員の方もいますし、優勝したら「強いとこおらんかったんやろ」と茶化してくれる社員の方もいます。どんな状況でも笑顔で迎えてくれるんです。僕たちから連絡する前に試合結果を調べてくれていますね。レースが終わって携帯を見ると、もう慰労のメッセージが入っています。」

去年は、大会のリモート中継を一個のパソコンで社員皆で見てくれていたとのこと。ここまで社員と選手のつながりが強いチームもそうないのではないだろうか。
筆者ももし大学生の時にこの話を聞いていたら、今治造船の門戸を叩いていたかもしれない。

▲練習に向かう御手洗選手を明るく送り出す社員の方々

目標とセカンドキャリア

主将の岡部選手に、今後の目標を伺った。

「会社の規定的に、選手活動へのサポートは30歳で終わりなんです。個人的な目標としては、来年の第100回全日本選手権でクウォドで優勝をして、ボートを引退するのが目標です。」

そう、今治造船の選手は30歳で会社のサポートを受けての選手活動を終える。少し早いのではと考える方もいるかもしれないが、そこには社員の生活を守るという会社の理念がある。

一般の社員だと30歳付近になると主任になる歳だということで、この歳でセカンドキャリアとしてしっかりと仕事の方に移管することになるのだ。もちろん、現在と同じ部署で働きたいとなれば働かせてもらえるし、こんなことをしたいと言えば挑戦をさせてもらえるという。

会社がセカンドキャリアを約束し、引退した選手を決してぞんざいに扱わない。
引退後も今治造船の社員として一人の社会人として存在を認められ職場で活躍することができるからこそ、安心して競技に取り組むことが出来るのだ。

「そして、自分たちが選手として輝くことで、社員の皆さんが元気になって、仕事のモチベーションになったりする。そう思ってもらえるような姿でいたいです。」

大学生へのメッセージ

最後に、社会人でボートを漕ごうか迷っている大学生へのメッセージをいただいた。

「社会人になってからは時間的制約や責任というものが付きまとうため、うまくいかないことも多いです。ある意味大学生の方が練習環境などはすごく恵まれていて、社会人になってからこんな環境でやるの?と思うこともあるんです。そんな時に、”社会人になって自分はボートを漕いでどうしたいのか?”をできるだけ明確にしていた方が頑張れる意味を見つけられると思います。」

なぜ漕ぐのか。これについては大学であろうと高校であろうとしっかりと考えておく必要がある。
そしてその思考は、社会人として漕ぐとなった場合にも必ず糧になる。


今治造船ボート部は現在、一緒に活動してくれるメンバーを募集している。

ー今治造船ボートは文武両道、選手として社会人としての両側面で人としての成長が出来るチームであると確信していますー

今治造船ボート部の方々のお話を聞いてみたい方は、コギカジまでご連絡いただくか、直接下記のリンクから問い合わせてみていただきたい。

■会社HP

https://www.imazo.co.jp/

■採用情報

https://www.imazo.co.jp/rec/

■ボート部リクルート相談窓口

info@imazo. com

(提供/今治造船株式会社)

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