勝手にボート部OBOG訪問 第5弾― 元一橋大学ボート部・現セーリング日本代表チームメンバー 笠谷さん Part 2

前回(Part. 1)の記事に続いて、笠谷さんへのインタビュー企画Part 2。ローイングからセーリングへ競技を”転向”、加えてアマチュアからプロアスリートに”転向”した笠谷さん。ネクストステージへチャレンジするその姿勢は、スポーツの枠を超えてあらゆるチャレンジャーを後押ししてくれる。

笠谷さん 経歴

大阪府出身。一橋大学入学後にボート競技を開始。大学卒業後は総合商社に勤務しながらボート競技を継続し、全日本選手権優勝などの成果を残す。

その後、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」に出場するSoftBank Team Japanの選考を通過し、英領バミューダ諸島でセーリング選手として活動。

現在はグローバル・セーリング・チャンピオンシップ「SailGP」で日本チームの選手として活動中。

https://sailgp.com/ja/teams/japan/

  • 目次
  • 1.過去・未来の楽しみ
  • 2.競技転向・プロアスリートの気づき
  • 3.今後の展望
  • 4.筆者後記

1.過去・未来の楽しみ

コ:クリムゾンギャング時代にタイ合宿があったそうですが、それはどういった経緯だったんですか?

タイのボート選手(写真右)と元旦に山登りした時の写真。

カ:非日常を大いに満喫しました。ボートのみならず、彼の人生観やタイ人の価値観などについても聞かせてもらって、視野がとても広がったことを覚えています。

カ:戸田でアジアカップがあり、その時に出ていたタイの選手と自分の後輩がFacebookで共通の知人だったので、そこ経由でメッセンジャーで連絡をすると、「来なよ!」と言ってもらったので、年末年始に行きました。笑

コ:タイではどこで漕いだのですか?

カ:バンコクからバスで2時間くらいのところにある湖だったと思います。いっぱい漕がしてもらって楽しかったですね。艇は全部WinTechで、艇庫は屋根はあるけど壁はなくて。現地のローイング選手は合宿が決まっていたみたいで、帰る人も一部はいましたけど、残った人も多くて、みんなで山に登ったりもしました。タイに行った理由としては、冬場は寒いし漕ぐ気力失せるから、また、未知の環境で漕いでみたいという思いがあったからです。とても良い経験になりました。

コ:タイの艇庫で練習をされている方は、プロなんですか?

カ:プロではないですが、国から一部補助金はもらっているみたいです。タイの代表選手になっていく人たちです。

コ:トレーニングなどでタイの選手から刺激を受けたところはありますか?

タイの艇置き場。壁がない簡易的なつくりで、艇は全部WinTech。

カ:やっぱり日本人の方が真面目にやっているような印象です。でも、日本に比べて設備が整っていない中でトレーニングに励んでいる姿勢は刺激になりました。また、最近は強くなっているみたいです。アジア選手権とかでも上位になったり、自分がタイに行った時よりもだいぶ強くなっているのかなと思います。

コ:そこで日本が追い抜かれると寂しいですよね。

カ:ただある意味、そこを踏まえて日本も改善できるのであれば良いと思います。外から見ていると、あまり大きな変化は起こっていない印象ではありますけど、今後の活躍には期待しています。

コ:オリンピックが来年あると思いますが、注目している選手などはいますか?

カ:ローイングに関しては、大学の後輩の荒川龍太選手(現NTT東日本所属)が良い感じに選考に残っていると思うので、彼がどこまで行ってくれるのかなという期待をしています。先輩としては楽しみです。あとは、日本ボート界的には、割とここで世代交代が進んだと思うので、若い世代の方々がどのように活躍をしてくれるのかが楽しみです。セーリングでは、今のチームメイトなんですけど、21歳でニュージーランド人と日本人のハーフの子が日本代表に内定しているので、その活躍が楽しみです。

さらに、別のチームメイトの奥さんも4大会連続の五輪日本代表に内定していて、金メダル候補です。そういう身近な人たちの活躍が楽しみです。また、オーストラリア人の元チームメイトについても「リオは銀メダルだったので次は金メダル!』と意気込んでいるので楽しみです!

2019年SailGPニューヨーク大会で初優勝した時の写真。笠谷さんが肩を組んでいるのが、日本代表に内定している日本/ニュージーランドのハーフである高橋レオ選手。

2.競技転向・プロアスリートの気づき

コ:世界で戦うプロアスリートとしての気づきなどありましたか?

カ:やっぱり周りの選手の実績はすごいです。セーリングの五輪金メダリストは何人もいますし、ローイングの金メダリストもいます。また、ある時、今活動しているSailGPからプロフィールを書いてくださいという依頼が来たんです。その時に実績を書く欄があって、「世界選手権もしくはオリンピックでメダルを取った経験があれば記載してください」と書いてあって、なんか求められる基準が高すぎませんか?と思って。笑 全日本選手権優勝と書こうと思ったんですけど、そこで国内大会で結果出しても意味ないんだなという感情になり、ちょっと寂しかったですね。笑  それこそソフトバンクチームジャパンの選考に申し込む時は少しでも興味を持ってもらえるように、書けることは全部書いたんですよ。長崎国体ダブル3位とかについても「ナショナルスポーツフェスティバル」みたいになんとか英語に訳して書いたんですけど、今回参加しているSailGPについてはそんな結果を一切書かせてくれないようなレベル感なんだなと、、、。要求どおりだと、仮にオリンピック4位でもダメなのかと、、、僕はオリンピックに出場すらしていないのでアレですけど。。笑 でも、だからこそ、これからの試合成績では負けたくないですね。

コ:例えばですけど、柔道では国内大会でメダルを取っていれば、オリンピックでも上位にいけるだろうという考え方はある程度通用すると思います。国内競技レベルの底上げができれば国内実績も書けるのかなとも思えますよね。

SailGP日本チームのミーティングの風景。国籍やバックグラウンドは様々だが、一人一人がチームのために積極的に動ける良いチームだと笠谷さんは語る。

カ:あと僕らのsailGPという大会は、去年始まった大会なんです。なのでブランディングはすごく意識していると思います。例えば、すごいアスリートが参加しているということをアピールするために、オリンピックの金メダリストが多数参加しているなどといった書き方をしています。自分のチームメイトの中にオーストラリア人で金メダルを取った人がいて、日本国内の広報でもその人の実績をアピールしていたりするので、やっぱりこのような見せ方も大事なんだなと感じます。

コ:最近だと国内エルゴ大会にエリックマレー選手(ニュージーランド元代表)が呼ばれていたりしてましたよね。

カ:実力を見てもらったり、興味を持ってもらったりするチャンスを得るためにも、見せ方は大事だと思います。SailGPだと「こんなすごい選手を集めているんです!」という見せ方はしますし、僕個人に関してもローイング全日本チャンピオンという説明をされることが多いです。そして、その肩書を活かしたことで得られたチャンスもあったと思います。

コ:武井壮さんみたいですね。競技はまだマイナーですけど、日本1位ということには変わりないです。

カ:これまでニュージーランド人やオーストラリア人と一緒に活動することが多かったのですが、それらの国だとローイングはメジャーなので、ローイングで結果を出していれば、「こいつは結構頑張るんじゃない!?」と思っていただけたのかなと自分なりには思っています。繰り返しですが、チャンスを掴むという観点では、嘘をつく訳ではないけど、自分の中身を見てもらえるチャンスを得るために、自分の見え方を工夫することはありだと思います。

コ:セルフブランディングされているのはすごいですね。

カ:いやー、ほんとに付きペアで全日本優勝をしていてよかったなと思います。笑

2019年SailGPニューヨーク大会で優勝インタビューに答えている笠谷さん。

3.今後の展望

コ:最後ですが、コギカジというボートのメディアの役割に対してなど、アドバイスとしてもお伺いしたいです。

カ:ボート選手が苦手なことをうまくサポートしてほしいなと思っています。現在の日本ボート界は商業的にうまく展開をしていくみたいなことに伸びしろがあると思うので、営利企業としてサポートしてもらえると、ローイング界全体として盛り上げることができるのではと思っています。フェンシングの太田さんみたいな方が協会のトップになって改革している例も他競技で見られますが、それは選手としての実績があってのものだと思います。組織がサポートをするような形で、個ではできないけどチームになって実現できるようになっていくと、ボート業界も変わってきたなと興味を持ってくれる人も増えるのかなと思います。

コ:すごく参考になりました!我々の存在意義はそこにあると感じています。

カ:あとは、ボート競技の価値を伝えてあげることもやって欲しいです。昔、とある記事の中で「ボート競技の魅力はなんですか?」と選手が聞かれて、「スピードです」と答えているのを見たんです。他にも「一体感」など人によっていろいろあると思うのですが、競技者目線の魅力のみならず、それ以外の魅力を言語化して発信したり、ボート競技で得られた能力が社会に出たときにどのように役に立つのかなどを発信してもらえればと思います。

2020年2月に開催されたSailGPシーズン2のシドニー大会。プラクティスレースのスタート直後で、速度は時速70km-80km程度。笠谷さん曰く、セーリングの魅力はスリルと迫力。相手との駆け引きや操作次第で何が起こるか分からない状態の中、最大時速100km近い高速でレースするスリルや爽快感はとても気持ちがいい。また、環境保護やSTEM教育への意識を高めたり、グローバルな視点を養ったりする上でも役立つ。 ※笠谷さんが乗っているF50というヨットは特に速度が出る。

コ:我々の活動を通じて少しでもボート競技の魅力を伝えていければと思います!

カ:最後に、ボート競技に関係する会社としていっぱい儲けて税金を納めながら会社として成長していけると、業界全体が潤うと思うので頑張ってください!とても楽しみにしています!

コ:ありがとうございます!!すごく勇気づけられました!お時間をいただきありがとうございます。

4.筆者後記

チャンスメイクは、人を大きく羽ばたかせる。

ただ、目の前のチャンスを全力で物にしてきたから、真に進めるということを忘れてはいけない。

見せ方も、魅せられる自分があってこそである。

一つ一つの成功体験が、いずれ自分を飛躍させてくれる。そう信じて、1ストロークに全集中して漕ぎ進もう。

(K)

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