本当の顔を残したい #Attention Days

『ボートのある風景』を写真で追うべくスタートした企画『Attention Days』。

富士フィルムの「写ルンです」100台を現役のボート部員を中心に配り、1シーズンの艇庫での生活やオフの日などボートとともにある日々を残そうというものだ。

クラウドファンディングで支援者を募る予定で、カメラを渡したボート部員の1シーズンの写真を中心にした写真集を作成する企画を12月からスタートさせる予定だ。そして最終的には、集まった写真をまとめ、カメラマンを務めた現役部員のインタビューを添えて1冊の写真集にしようと計画しているという。

今回コギカジ では、この企画の発案者で、日本代表クルーの強化部マネージャーとしても活動していた山田さんにお話を伺った。

ボートの写真を撮り続けるなかで、本当に撮りたいものに気がついたという山田さん。

プロジェクトの企画意図や、想いについてお話し頂きました。

素敵だけど、同じ写真

山田さん
「2018年シーズンに、ナショナルチームの学生スタッフの募集がありました。当時大学院の2回生で、休学して代表クルーに飛び込みました。何か特筆したスキルが自分にあったわけではありません。でも”何かの日本代表”に関われるというチャンスは、これからの人生でもそうないだろうと感じ、思い切ってチャレンジしました。
その中で、当時はスタッフにデジカメが配布されて、それで選手たちを撮影することが仕事の一つでした。思えば写真が好きとかではなく、チームを知ってもらうために、漕手を追うことからカメラマンとしてのキャリアがスタートしました」

その他の業務もこなしながら、1年間必死で漕手たちの姿を追い続けた。

そして代表のクルーの任期を終え、しばらくして母校の金沢大学でコーチとして活動を開始。

一眼レフのカメラを自腹で購入して、その後もボート部員の姿を残し続け、インカレなどの大会でも現地にも足を運び、コーチ業の傍ら漕手の姿を追ったという。

山田さんがこれまでに撮った写真はこちら【https://ryuiyamada.myportfolio.com/work

広報の必要性で始めたボートの撮影だが、続ける中で山田さんはその楽しさにのめり込んでいった。

しかし夢中でボート選手の姿を捉え続ける中で、山田さんの中には次第にある疑問が浮かんできたという。

山田さん
「撮影した写真を見返してみると、どれも素敵な写真だけど、同じように見えてしまう。もちろん個々の選手に試合に至るまでの背景や想いがあるはずなのに、それを自分の撮る写真では残せていないと感じました。お金をかけてカメラやレンズの性能を上げれば上げるほど、レースでの漕手の姿や表情まで鮮明に残すことができる。でもそれは単に目の前のレースを解像度の高いデータとして残すことにすぎないと思い始めました。

どんなにお金をかけても、その先というか、奥には到達できない。カメラの性能や技術だけでは、撮りたいものは撮れないのではないかと限界を感じるようになりました」

きっかけになった1枚の写真

レース中の漕手が魅力的であるということは言うまでもないが、カメラの性能勝負では似たような写真しか撮ることができない。ボートをもっと他の角度から撮りたいと思うようになった山田さん。


ある普段の練習中に、偶然に残された写真が転機になった。

山田さん
「その日は練習前からなんとなく写真を撮っていました。まだ乗艇前の準備で、漕手の活気も何もない状態でした。練習前の暇つぶしにただなんとなくシャッターを切ったのですが、見返してみるとその中の1枚にすごく惹きつけられ、自分で撮ったものながら、いつもの写真とは違う魅力を感じました」

金沢大学の艇庫にて。ボートのある日常を残したいと、山田さんが気がついたきっかけの1枚になった。

山田さん
「この1枚が取れた後、日常をもっと写してみようと思いました。

でもなぜか納得のいく次の写真を撮ることができませんでした。
偶然にも艇庫生活の断片のような1枚を撮ることができましたが、練習以外でのボート部員の生き方や、「本当の顔」みたいなものを写すには至っていないなと思いました。

撮りたいものも分かっている、道具も一応一通り揃えた。写真を始めた頃より知識もきっとついているはずなのに、なぜだろうと疑問に思っていました」

#AttentionDays

水上だけではなく、もっと広くボートのある日常を残したいと考えた山田さん。きっかけになった先述の1枚の写真以降も、違った角度からボートを捉えようとしていた。

しかし、その後もなぜか納得のいく写真を撮ることはできなかった。

山田さん
「当初は自分で全国のボート部に実際に足を運んで、そこでボート部員たちや、艇庫や水辺の近隣の風景を撮影しようと思っていました。でもなかなかあの1枚以来、自分が思うような写真を撮影することができませんでした。そう思っているときに、Youtubeで『写真大学(※1)』を見ていて、高校生自身が自分の目線で生き生きと日常を切り取っているのを見て、やっぱり同じ空間を共有して生きていないと撮影できないものがあるなと感じました」

(※1)『写真大学』は、写真家の瀬尾浩司さんが、 写真家、デザイナー、編集者など様々なプロフェッショナルたちをインタビューし、写真について語るYoutubeチャンネル

#40は高校生時代に撮影した写真集『未完成の青』などの作品で知られる、葵さんの回だった。『未完成の青』はその被写体の一部でもある当時高校生の葵さんが、内側からその生活を撮影した写真集だ。
【写真大学#40】21世紀生まれの写真家・葵「未完成のまま生きていく」

山田さん
「自分の撮りたいものを撮ろうと思い、少しずつ写真の理解を深める中で、皮肉にも自分が今本当に見たくて、残したいものって、自分では撮影できないんだなと気がつくことになりました。あの1枚もあくまで、私がコーチとしてみるボート部の日常であって部員の見ている世界とも少し違う気がしていました」

そこで今回思いついたのが、「現役部員に写ルンですを配布して、ボートのある日々を撮影してもらう」という企画、『Attention Days』だ。
被写体と同じ空間を共有する部員自ら写真をとってもらうことで、ボート部員の普段見えない一面を写真で残そうという狙いだ。
タイトルはボート競技のスタートの合図”Attention Go”から引用し、今まであまり残されてこなかった、”レースが始まるまでの日々”や”レース中以外の姿”を追うという意味が込められている。

#Attention Days 既に撮影が一部スタートしている。艇庫での何気ない写真を集め始めている。
#Attention Days



今回の撮影には『写ルンです』を利用する。1台27枚撮りという制約が時間の重みを感じるきっかけを、そして性能としても自分の身の回りしか大きく写せないカメラであれば、ボートのある生活やマネージャー・トレーナーなどにも注目がいくのではと考えているという。

山田さん
「たとえ自分自身が全国のボート部員のもとを訪ねて写真を撮らせてもらったとしても、そこに映るのは『外から来た人が撮った写真』になってしまうと思いました。内側にいる人にしか見えていないものにカメラを向けたり、同じ現役部員から向けられたカメラだからこそ、見せられる表情があるのではないかと思いました。それに、多くの大学が目指している日本一とかインカレ優勝って大学生としての生き方を問われていると思うんです。大学生活、ボートが全てじゃないかもしれないですけど、みんなそれくらい全てをかけてやっている。そのボートにかける生き方を追いかけられるのは同じ部員しかいないなと」

現役のボート部員にしか残せない写真がある。それを自分自身見てみたいし、残したい。それが今回の企画に踏み切った根幹にある想いだという。
最後に山田さんが今回のプロジェクトにかける想いを更に踏み込んで伺った。

なぜボートの写真なのか

金沢大学に入学した山田さんは、漕手としてボートを漕ぐ日々を送っていた。しかし、初めてのインカレを控えていた山田さんに、突然体調に異変が訪れた。

山田さん
「実は自分が2年生の時に、練習中に蕁麻疹が出てしまって。医師の診断の結果、気管支喘息でした。インカレを直前に控えていたこともあり、なんとか練習を継続しようとしたのですが、病状がよくなくインカレに一度も出ることなく漕手を引退したんです」

その後はスタッフ・学生コーチに転向し、ボート部が強くなることに尽力した山田さん。当時、他大学の情報が不足していると感じた山田さんは、関西や九州の大学にまで足を運び情報収集するなど精力的に活動した。漕手としては引退したが、ボート部員として生活を続ける中で、ある想いに至ったという。

山田さん
「ある時から”水上だけがボートの全てではない”と思えるようになって。漕がなくても、ガッツポーズできる瞬間ってあるなって思えて、マネージャーや学生コーチをやっている中でこっちの方が向いているなって気づけて。

それは写真に関しても言えることだと感じていて、コース上で躍動する姿だけが、ボート部員の魅力の全てではないなと。
一緒にご飯を食べたり、オフの日に温泉に行ったり、だれだれが留年しそうだと笑ったり、そういった日々にも楽しさや価値があったのに。外側からコーチやカメラマンとして撮影しているとそのような写真はなかなか生まれないと思いました。

レースで見せるのとは違う、ボート部員の普段の生活や本当の顔みたいなものをどうにか残せないか。マネージャーやトレーナーをやっている部員にもフォーカスできないか。そういった想いで今回の企画をスタートさせました」

現在山田さんは2021年12月のクラウドファンディングのスタートに向けて、準備を進めているという。

もしこの写真集が完成すれば、きっと今までにない素敵なものになるだろう。
今後もこのプロジェクトを応援していきたい。

#Attention Days

カメラマン募集中!!!(11/30〆切)

この企画の肝となるのは、カメラマン=現役ボート部の皆さんです。

以下のリンクから募集していますので、ぜひ応募してみてください!

https://forms.gle/NYc77civfBp7fAhG8



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