特別企画「真髄」  第3回 競技用ボートの扱い方その2

オアズパーソン諸君。
君はRowingを知っているか。
「知っている」と思われたかもしれない。
漕ぎ方?しんどさ?楽しさ?美しさ?
そのくらいはわかってるさ、と。
いや、待つんだ。
君は本当にRowingのことを知っているか?
君が乗っているそれ、そう、「フネ」のことだ。
では諸君を真のオアズパーソンたらしめるべく、
特別企画「真髄」を始めよう。

世界的に有名なとある造船会社の輸入代理店に
お勤めのT.S.氏に、
数回に渡って寄稿していただく
特別企画「真髄」。
第2回は「競技用ボートの扱い方」。
知らない間に雑になっているやもしれない
「フネの扱い」について、
改めて学んで行こう。

ー ー ー ー ー

全国の真髄ファンの皆さん、お待たせしました。T.S.です。

今回は前回の続き、ボートの扱い方パート2です。
フネを取り扱う上での注意点が多めです。それでは早速紹介していきます。

目次

  1. ■ベアリングウィール
  2. ■ローロックのブッシュ
  3. ■シューズ
  4. ■艇置き台へのボートの置き方
  5. ■ボートの洗浄
  6. ■おわりに

■ベアリングウィール

俗に言うコロです。このパーツですが、内部にボールベアリングというパーツが組み込まれています。このボールベアリングは、回転軸のまわりに小さな金属球が並べられており、それによって抵抗の少ないスムースな回転をしてくれます。そしてこの金属球の隙間には、摩擦を減らすためにグリスが充填されています。
ここからが注意ポイントです。レールやウィールに汚れが付いていたり、何となく回転が悪い気がして、このパーツにパーツクリーナーや潤滑油をスプレーしてしまうと充填されたグリスが流れ出てしまい、パーツの寿命を極端に縮めてしまいます。絶対にやってはいけません。それらをスプレーすると、一時的に動きが良くなる気がしますが、パーツにはダメージです。潤滑油が残っているとウィールとレールの間に汚れが付着しやすく、傷や摩耗の原因となります。さらに、溶剤系の薬品はプラスチックを劣化させてしまう作用のあるものが多いです。これもパーツの寿命を縮める原因です。クリーニングしたいときは綺麗な濡れウェスで拭き取るだけにしましょう。
また、グリスの切れたベアリングは空回しするとハンドスピナー的に良く回ります。その為勘違いしやすいのですが、状態の良いベアリングは空回ししようとしても回らず止まります。良く回るベアリングは残念ながら既に寿命を迎えています。
写真は劣化して亀裂が入り、摩耗して小さくなってしまっているウィールです。これは遙か昔に寿命を迎えているので交換しなければなりません。

画像1

■ローロックのブッシュ

オールのカバー角度を調整するパーツです。これはボートの中でも消耗の激しいパーツの一つです。先ずは以下の写真をご覧ください。

画像2


ブッシュとシャフトの間に隙間が空いてしまっている事が確認出来ると思います。
これは、何度もローイングの動作を重ねることで2つのパーツが擦れ合い、摩耗してしまっている状態です。こうなるといくらリギングで角度を正確に出そうとも、それは望めません。このパーツも状態を確認して定期的に交換しましょう。

■シューズ

自転車、投てき種目、クライミングなど、力をダイレクトに伝えなければいけないスポーツにおいて、シューズは非常に重要です。それはボートにも共通する事で、力を加える上で非常に重要なパーツなのですが意外に雑なチョイスをされていたり、ボロボロの状態の物が装着されているボートをよく見かけます。特にレースに出るボートでは、足にフィットしたヘタっていないシューズの使用をオススメします。
長距離を走るランニングシューズは、ジャストサイズではつま先が靴にあたり爪が死んでしまうので少し余裕があるサイズ選びをしますね。その感覚で選びがちですが、ボートはジャストサイズが良いです。
さらにソールが割れたりベルクロがしっかりとくっつかない様な状態はパフォーマンスに影響があるばかりか、乗艇中に破損して事故に繋がりかねません。写真の様な状態は最悪なのですぐに交換しましょう。

画像3

■艇置き台へのボートの置き方

リギングの際などボートを固定したい時、写真の様な置き方をして艇を固定している状態をよく見かけます。このやり方は注意が必要です。台の骨組み部分とハルが干渉する可能性があります。よく見てみましょう。下の写真をご覧ください。

画像4
画像5

ハルと金属の骨組みが当たってしまっています。これはハルの凹みの原因になります。なので出来ればこのような艇置き台の使い方は避けた方が無難です。気を付けましょう。また、台が半開きになった状態で艇を乗せることも危険です。布にボートが乗る前に、完全に下がりきっていない骨組みの上にハルが乗ってしまうので、これも凹みの原因になります。しっかりと開いて居ることを確認して使用しましょう。



■ボートの洗浄

乗艇後はボートを洗浄しましょう。乗艇後に綺麗な水を掛けながら擦り洗いするだけでも汚れの沈着はかなり防げます。ボートを浮かべている水域の殆ど全ては汚れていると考えて下さい。一度の乗艇で付着する量が少ないとわかりにくいのですが、水洗いせずに拭き上げるだけでは確実に汚れは蓄積します。汚れがひどい場合は中性洗剤などを使って洗う事をおすすめします。毎日しっかりお手入れすればコンパウンドを使って汚れを擦り落としたり、薬品を使うような頻度は確実に減らせます。それらはボートの表面に少なからずダメージを与えるので、頻繁な使用は避けた方が無難です。

画像6

■おわりに

今回紹介した内容は日頃のお手入れに関することをいくつか書きました。ボートには複雑なメンテナンスはほとんど必要ありません。汚れも水溶性のものが殆どですので、摩耗の確認と日常的なクリーニングさえ怠らなければ驚くほど寿命が伸びてくれます。
大切な相棒を最高な状態でキープしましょう!

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