明治38年に隅田川向島にて第1回大会が開催されて以来、100年以上の歴史を誇る早慶レガッタ。今年は第91回大会が1週間後の4月17日に開催予定です。
早慶レガッタライブ配信URL: https://www.cmstream.com/the_regatta/live_youtube/
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コギカジでは今回早慶レガッタ応援企画として、
試合が行われる4月17日まで、ボート競技ならではのレース前のカウントダウンアナウンス形式で、大会に携わる両校部員の記事を発信していきます。
本日は早慶レガッタまで『5000minutes』です。
今回は、慶応義塾大学 対校エイトCOX 山中健吾 選手にお話を伺いました。
そして記事の最後には、ご自身がボートや早慶レガッタについて信じているもの『What I believe』について語っていただいています。
「COXといえば山中と呼ばれる存在に」
「COXといえば山中と呼ばれる存在になります。」
これは山中選手が入部した際に、先輩、コーチの前で宣言した言葉だ。
山中選手は、今年の早慶レガッタのトップクルーのCOXを務める。
中学まではラクロスに打ち込んでいた山中選手は、高校でボートを始めた。
「実は叔父が慶應ボート部のマネージャーで、小さい頃から早慶レガッタを見に行っていたので、ボートは身近なところにありました。ただ、COXになったのは流れです。(笑)」
高校で出場した早慶レガッタでは、途中で腹切り(オールが水に取られ減速すること)があったが、執念の追い上げで勝利を手にしている。
しかし、インターハイでは上位陣の分厚い壁に阻まれ、思うような結果を得られなかった。その悔しさが胸に残っていたからこそ、あの言葉が口をついて出たのだろう。
「引退してからも名前が残るくらい自分の色を出して、チームに貢献して、結果としてそういう人間になれればいいなと思っています」
一丸のクルーをつくる
今年のトップクルーは、昨年の早慶レガッタであの接戦をモノにしたクルーのうち、5人の漕手が乗っている。したがって、「土壇場での出力」が今年のクルーの強みだという。
これは、3月に行われたお花見レガッタでも結果として現れている。(後半で中央大学を差し切って逆転優勝)
この強みを最大化させることが、山中選手の仕事の一つだ。
「今回のクルーは、パワー重視の選手とテクニック重視の選手で構成されています。そこの考え方の違いをバランスを見ながらうまくまとめてあげていくことが、自分の仕事の一つだと思っています。
また、昨年はセカンドエイトに乗っていたのですが、うまく全員を巻き込んだクルーメイクをすることができませんでした。そういう意味でも、今年はクルー全員を巻き込んでコミュニケーションを取り、全員の共通意識をつくることができていると感じます」
COXの楽しみは、自分の声で全員がまとまりリアクションがあるところと答えた山中選手。クルーづくりの名手としての手腕が早慶レガッタのみどころの一つになるだろう。
早慶レガッタはCOXが鍵を握っている
今年のトップクルーのレースは、ちょうど上げ潮のタイミング、そして大潮が重なることで、例年にないスピーディーな展開が予想される。
これは観戦者側が早慶レガッタを楽しむ上でも重要な要素だが、選手たちにとっても戦略に大きく関わる。
山中選手は、ハイレートで駆け抜けることが戦術のひとつだと紹介してくれたが、さらにCOXこそが勝負の分け目になると宣言した。
「去年のレースもまさにCOXの差が出たと言われています。静水ではないラフなコンディション、蛇行するコース、3750mという距離、上げ潮プラス大潮という状況。それらすべてに対応するためには、COXの存在が不可欠であり、大きな責任を感じています。静水での実力はもはや関係ありません」
「そして、両校のペースが落ちてくる2000mを超えたあたり、蔵前橋~吾妻橋が勝負のポイントだと考えています。漕手をいかにモチベートするか、いかによいリズムを刻ませるか、両校の駆け引きが垣間見える部分で、自分としても思い入れがあります」
この話を聞くと、また一味違った早慶レガッタの見方ができそうだ。両校ともにラフコンディション対応のために特注した専用の舟に乗り、3750mのコースの中で様々な駆け引きを繰り広げる。そして、蔵前橋を超えた後のドラマティックな展開を期待せずにはいられない。
山中選手の強みーPDCAサイクル
取材の中で、ひとつ感じたことがあった。それは、山中選手が「課題を見つけそれを解決する手段を試行錯誤する」ことを息を吸うようにされていることだ。
「去年セカンドエイトに乗っていたときは、ーーが課題で、今年は○○のように対応しました。」
「高校のときクォドに乗っていたときは、ーーが課題で、大学では○○のように対応しました。」
「新しい舟に乗ったときは、ーーが課題で、○○のように対応しました。」
いわゆるPDCAサイクルを上手に扱うことで、自身を、クルーを、ボート部自体を成長させてきているのだろう。
そんな山中選手に今の課題を聞いてみた。
「もっと自分を出していく必要があると考えています。これは早慶レガッタに限った話ではなく、引退までの課題です。常に選手とコミュニケーションを取り、新しい案を出したりして、自分が乗っている価値を改めて考えながら日々活動しています」
今年の慶應ボート部への期待度も、ぐんと高まってきたのではないだろうか。
What I believe
これまでの記事の中でも伺ってきた『What I believe』。例にもれず山中選手にも伺うことができた。
「いろんな道があった中で、ボートを選んだ。この選択に妥協したくない。打ち込み切りたい。全力でやりたい。”自分の選択”を信じています」
取材の最後には、独走状態でゴールしたいと語ってくれた山中選手。
自分の選択を信じる気持ちで悔いなくゴールする姿が、今から待ちきれない。
取材後記
これまで計6名の方にお話を伺ってきた早慶レガッタ応援企画記事も、今回で最終回です。
レースまで○○minutesとカウントダウン形式にすることで、レースまでの期待感、緊張感を生み出すことを意図しましたが、それもとうとう5000minutesまで来ました。
最後にお話を伺った山中選手。思考が整理されており、発言もひとつひとつ丁寧で、COXとしての力量の高さが伺えました。
今後COXを続けないのかという問いには、少し期待していたが社会人チームの入れ替わりタイミングと合わずに難しい状況ではあるとのこと。
残念ではありますが、山中選手が今年一年素晴らしい結果を出すことは容易に想像がつきます。
今回お話を伺えていませんが、早稲田大学トップクルーのCOXも同様なのでしょう。
今年も熱戦が期待される早慶レガッタ。
スタート合図まで、5000minutes。
(〇取材:中山、山田 〇記事:中山)
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